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その1秒に震えたい

大切なことは全部「る」が教えてくれた~祝!座長御出演~


安西くんが明治座の座長やるよおおおおおおおおおおおおおお


神こと三上園芸まさしの策略に嵌められたうっかり事故*1でるひま担から安西担への見事なシフトを遂げて早2年、推し推し脚本、推し演出、推し舞台の座長になりました。生きててよかった。

今年はくるかな?いやまだ早いかな?と安西担界隈では折に触れて話題には上がっていたのですが、いつかは明治座にのぼりが上がる日がくるのかな、とか、座長弁当食べたいな、とか、コバカツに相談しに行ってお金を使えとアドバイスされるのかな、とかいつの間にか思い描くようになっていたことが何より驚き。そのくらい、「る」の座長公演って特別なんです。


「るひまのお気に入り俳優なんでしょ?」みたいにちょっと冷めた目で見る人もいると思います。「る」が内輪ノリと言われても否定はできないと思います。「政子」だけでひとしきり笑える集団を気味悪がられても仕方ないです。ただ一度見たら「政子」の二文字が立派なコンテンツになります。政子ォーーーーーーー!!!!!!


それでも私が「る」を追い続けたのは、単に毎年恒例鬼のエチュード大会*2を観に行きたいからではなく、「る」がどこよりもストイックに演劇を作ってきたことを知ってるから。若い役者に演劇をやらせることに徹してきたから。それから、座組を背負う座長に、それぞれ違う試練を与え続けてきたから。


楽な座長公演なんてどこにもないけど、「る」の座長はとびきり厳しいし、必ずその役者のその後に変化をもたらしているように感じます。オーダーメイドの試練を与え続ける「る」の座長たちを、ここで自分なりに振り返ってみようかなあという記事です。





苦しませ抜いた座長、矢崎広

ぴろしは「る」の制作公演に初期から出続けたかなりの古参。かつ、初期からもっとも負荷を与え続けられてきた役者だと思います。

最初の座長公演は「マクベス」なんですが、当時は「いやワシJの者ですし舞台界隈には片足突っ込む程度でかまへんですし」みたいな変な遠慮で観に行かなかったことをわりと今でも悔いてます。

座長を務めた「る・フェア」含め、年末の祭シリーズではひょうきんな役を演じることが多かったぴろし。このへんは祭シリーズの前身である戦国鍋で大ヒットしてたキャラの系統を継いでる感じがします。その明るさに見え隠れする悲しさを、一瞬で見せるのが本当に上手かった。あのごった煮の舞台上で、へらへらした三枚目キャラで主役やり通すってすごく大変なんですよ。軸がないから。でも、クライマックスで見せるその一瞬の悲しみで客席を支配する鋭さが当時の彼の魅力だったように思います。

で、ミュージカル方面でも頭角を現すようになり、さらにめちゃくちゃ多忙になり祭シリーズからはしばらく遠ざかっていたのですが、2015年に「黒いハンカチーフ」で久しぶりに「る」の看板を背負うことになります。

この作品で演じた「ヒルネ先生」は、昭和30年代の無精髭のだらしない町医者。年齢もちょっと上。かなり「らしくない」役をあてがったな、と思っていました。しかも周りを固めるのは、芝居一筋で戦い抜いてきたベテランの強者だらけ。さらに本は死ぬほど難しくて面白い。たのむDVDで観てくれ。正直、周囲のエネルギーと本のスピード感に振り回されないようかなり歯を食いしばって苦しんで舞台に立っていた感じは客席にも伝わってきました。

ここでぴろしにヒルネ先生を演じさせた「る」の思惑として、「若手俳優矢崎広は終わった」というメッセージを世間に伝えるためなのかな、と勝手に推測しています。

若手俳優」って、別に眉をひそめるべき言葉じゃないと私は思います。若手俳優舞台も若手俳優仕事も大好きです。エンターテイメントの髄だもん。
ただ、若手には若手の役目があり、今の若手にその役割をあてがうには、上が抜けていかなきゃいけない。そして、これまで若手の仕事で育ってきた役者を、次の役目へと引き継がせなきゃいけない。あの頃のぴろしには、次へと歩んでいく実力があった。その機会と試練を、ヒルネ先生に込めたんじゃないでしょうか。

これだけ毎回違う試練を与え続けて、とことん苦しませ抜いた役者はほかに見ません。2部の余興ユニットの振付が難しすぎて混乱して泣いてたこともありました。板を降りてる時のぴろしは、苦しい顔ばかりしていたように思います。

そして今、彼は押しも押されぬ売れっ子役者としてミュージカルからストレートから引っ張りだこ。ご結婚も発表しました。黒ハンがそうさせたかはわかりませんが、ぴろしは着実に、ぴろしの道を歩んでいます。

初期からぴろしを鍛え抜いた「る」がその役者を送り出していく、若手の登竜門ともいうべき成功モデルの代表例がぴろしなんじゃないかと思っています。



試した座長 滝口幸広

タッキーの明治座座長就任発表は2015年が明けて間もないカウントダウン公演中。「ゲッ〇ーズ飯田にブレイクすると言われ続けた2014年」をさんざんネタにした年末は伏線だったとでも言わんばかりに「ね!ブレイクしたでしょー!!」と報告する幸せそうな顔は今でも鮮明に覚えています。

ちなみに初座長公演のタイトルは「滝口炎上」です。正月のTLで「聞き間違いかもしれません><」というレポが多数流れてきましたが一言一句合ってました。

そんな彼に任されたのは、ベッタベタな大衆演劇。勧善懲悪の時代劇と歌謡ショーを明治座でやるという、王道すぎて逆に変わり種っぽく見えてしまうほどの公演でした。

「る」にあった思惑はというと、

この企画が動き出したのは約2年前でございます。
お客様との関係性において、「距離感」が独特な滝口氏。そんな滝口氏で何か考えられないだろうかと企画したのが「滝口炎上」です。
しかし、そのようなスタートでしたので当初は滝口氏が扇子を使って水芸をする、とか「たっきーに出来る100の事」にチャレンジ!というようなイメージのイベントに近い企画でした。

しかし、2年前に弊社と明治座さんで共同製作させていただきました、源義経の物語の「る・フェア」や「ドリームジャンボ宝ぶね」「僕等の図書室3」、そして昨年の「るの祭典」と
ご一緒させていただく作品を1つ終えるにつけ、滝口幸広氏の持つ独特の空気感、暴挙にでるような役所の後に見せる繊細さや上品さを拝見し、客席に向かって魅せるやんちゃさとは別の、俳優「滝口幸広」氏の更なる違った側面を舞台上で拝見したいと思いました。

ameblo.jp


私が「るひまは座長に座組を作らせている」と確信できたエントリです。
「滝口炎上」は、「るひまのいつめん」としての彼の親しみに賭けた作品だったと思います。
滝口が作る座組を見てみたい、「たっきーにできる100のこと」がなまじネタじゃなく本気で予想されていた観客のイメージを逆手に取るよう仕掛けたいという思惑から生まれたのが、あの完璧な大衆演劇だったんじゃないかなあ。

実際、誰の懐にも入っていくような年下感(弟キャラとはまた違う)が、山下銀之丞、大和田獏といった大物揃いの座組の賑わいを形作っていたし、「滝口ってそういえばめちゃくちゃ美形なんだよね」と定期的にハッとさせられるような端正な佇まいを存分に引き出す若大将ぶりがよく似合っていた。

あと個人的に彼の持ち味だと思っているのが、大味の芝居に違和感がないこと。勧善懲悪時代劇における将軍役に求められることって、例えばこれまでぴろしが演じてきた鋭さとは違う「大味なおいしさ」だと思っています。それが彼にはできた。彼が大衆演劇スターをやれることを、るひまは見抜いていたのだと気づいたときにこの制作会社の真の凄さを思い知った気がします。

そういえばこの間、うしろシティの阿諏訪さんことサイゲン大介目当てで日テレのバラエティを見ていたら時短料理王子として颯爽と滝口が現れてお茶吹きました。こういうお茶の間のお料理王子みたいな、やっぱり大味の親しみやすさは秀逸だよね。



任せる座長 三上真史

「三上なしに舞台は回らない」と思う人は少なくないと思います。分刻みのカウントダウン公演のタイムキープを「僕やりますよ」と司会に立つ自身の手元の腕時計一つでコントロールしきった男公演前の予習イベントで自作の資料とおそらく自前のPCで完璧なプレゼンを披露した男(台本はあったのに)「知ってるか?あいつが1時間に覚える台本のページ数」と役者仲間に噂される男、それが三上真史です。

彼は祭シリーズ二作目で座長を経験。まだ「戦国鍋の舞台版」という位置づけだった当時の年末舞台で、鍋の出演経験のなかった彼に突然座長の任が下ったことに当時の私もやや驚きでした。

ちなみに、その後鍋の新シリーズで本編への出演が決まったのを喜んでいたまさしに「よかったなあああああ!!!」と私も安堵したのでした。

その大役をやりきった彼は、趣味の園芸で磨いたMC業も相まって、「る」に欠かせない戦力として大活躍することになります。
園芸王子と料理王子として、滝口ユッキーとコンビを組んで劇場やイベントのプロデュースにあたることも。おそらく企画において彼にはかなりの裁量を任せられているんじゃないかな。

とはいえ、彼は周りを動かすことこそ秀でているものの、自分自身を映し出すことは比較的得意でないように感じます。*3その彼の壁にあえて光を当てたのが、2015年に座長を務めた「納祭」なのではないかと考えています。

他人の心が読めてしまうことを隠しながら生きる田村麻呂は、他者にも自分にも見えないバリアを張っているような人物でした。自己への葛藤に苦しむ役を演じるには、自己をさらけ出さなければならない。他者を気遣うことに長けた彼に、「三上、自分自身だけと向き合ってみろ」という、ある意味彼の持ち味を捨てる試練を与えていたように思います。


背中を押した座長 松田凌

彼が座長を務めたのは「遠ざかるネバーランド」の再演。私は上映会で観たのですが、上映中何度も逃げ出したくなったと思えば、上映後にはしばらく座席を立てなくなる、心臓をわしづかみにするような大作でした。

彼が狂気的なピーターパンを演じたのは、薄ミュの斎藤としてデビューし、ライダーを経て売れっ子役者として加速していた頃。当時の彼に、小さなシアターウエストであのマニアックな物語を託した「る」の思い切りたるや。

彼が下北演劇を観て役者を志したほどの「演劇」好きだったことを知ってか知らずか、「松田凌、演劇やれるよな?」というメッセージとともに当時の彼の背中を押したような作品でした。

その1年後、彼は「黒いハンカチーフ」で大物役者たち、そして薄ミュの共演者であるぴろしと同じ舞台を踏むことになります。「松田凌にはもったいない」という声もあったくらい、フレッシュな役どころを任されていた黒ハン。ただ、ワケありだらけの登場人物の中で唯一何も知らない新米刑事というポジションの、「いい意味で浮く」という役割を彼は見事に演じ切っていました。
あれほど層が厚い作品に彼を起用したことからは、やっぱり彼に演劇をやらせたい、演劇のできる役者として認めさせたいという思惑を予想せずにはいられません。

これは個人的な希望でもあるのですが、「る」は彼をぴろしのように世に送り出したいのかなあ…とも考えています。



ずっと見ていた座長 大山真志

まさしもこれまた「る」の常連。「英雄シリーズ」で何度か座長を務めている古参メンバーのひとりです。

そんなまさしが三上くんと座長を務めたのが、2015年の納める・祭。対立する二陣営をミュージカルとストレートプレイで表現するというぶっとんだ(主にキャスティングが)構成の作品において、まさしはミュージカルチームの統領を務めました。

すすり泣きの大合唱と「まさしに泣かされるとは思わなかった」という悲鳴で初日公演を席巻した納祭のMVPは、間違いなく彼だったと思います。

100kg級の俳優というヤバさ通り越して愛おしいキャラクターがすっかり板についてしまったまさしですが、いやまあ稽古場で「カップうどんは汁物」とかいう名言残す彼にも問題はあると思うんですが、「る」は、まさしがどれだけ優秀な役者かを前面に押し出す役を与えました。

ミュージカル子役出身のエリートである彼に「そういえばまさしってめちゃくちゃ踊れるし歌えるんだった…」とハッとさせられるのが年末の恒例行事だったのですが、今作では満を持して大山真志はすげえんだぞ」と真正面から自慢する「る」の満足気な表情が見えた気がしました。

もちろんファンは知ってた。制作界も知ってた。だけれども、「ああ、あの100kgある」という第一印象に隠れてなかなか正面切って光が当たることの少ない「大山真志はすげえんだぞ」を、「る」はずっと見ていたし、それを世間に知らしめる機を計らっていたんだと思います。


手を差し伸べた座長 辻本祐樹

このブログでは「現場の恋人」としておなじみの辻本くん。正直写真や動画にはあまり惹かれないのですがこと舞台になると「この人こんなに綺麗だったっけ…!!?」と観客(主にわたし)を惑わせるキラープレイヤーです。

そんな辻本くんが今年演じた「猿狸合戦」は、2年前の年末作品のその後、しかも主役ではなかった秀吉にフォーカスを当てた異色の作品です。

その1年前、納祭で演じた母礼に座組の誰よりも苦労していたことは有名な話。個性派揃いの蝦夷チームで板挟みに遭う中間管理職としての役割は、さぞ難しかったことと思います。

たぶんですが、「る」はこの時の辻本くんの成長があったからこそ、猿狸合戦を任せたんじゃないかと思います。実際、猿狸での辻本くんを見て「見違えるほど上手くなった」と度肝を抜かれたのは私だけではなかったはず。ラストシーンでハート掴まれたの私だけじゃないでしょ?ね?現場の恋人でしょ?

これは妄想の域を過ぎないのですが、かつて辻本くんは他社の座長公演でおそらくすごく嫌な思いをしていて、30歳を迎えた彼がどうにか役者として輝ける機会に恵まれてほしいと陰ながらずっと願っていました。そういう記憶があったので、座長公演を終えて晴れやかな顔で舞台に立つ辻本くんを見て「ありがとう、ありがとうなるひま…」とひとり心の涙を流したのでした。

そんな彼が今年は明治座にのぼりを立てるということで、この2年ほどの彼の歩みをちゃんと評価して、都度手を差し伸べてきた「る」への信頼がいっそう増しました。たぶん今年も、板垣先生にしごかれまくるであろう彼がどんな座組を作るのか、楽しみでなりません。



そして、本来なら最後に安西座長とは?を書くべきなのですが、私が地理的な都合により運悪く「る」での彼の初座長公演をこの目で見られなかったので、それからやっぱり今作でより彼に問われるであろう「座長としての役目」をしっかり見届けたいので、それは年明けに、ここに書くことにします。


年末たのしみだーーーーー!!!!弁当食べるぞーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!

*1:過去ログ参照

*2:エチュードの鬼、小林健一さんによって舞台上で行われる若手役者の通過儀礼

*3:自分がイジられるのを避けてるし自分が褒められるとめちゃくちゃ焦る