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その1秒に震えたい

ダブルピースとカフェテラス

昨年からさんざんゴリ押しを続けてきたのでモロに薄々バレてはおりますが、趣味が増えました。「まきさん守備範囲が広いんですね」と言われ続けた多感な青春時代を過ぎてだいぶ落ち着いたと思った矢先に、またやってしまいました。

今度の畑は西洋画。印象派と19世紀末画家です。

随分と文化的で聞こえの良い趣味ができて会話がもつー!という一面もあれど絵画畑、メッチャヲタクに優しい。ヲタクに餌まいてる。こんなにヲタヲタしい畑なのに吉住渉漫画に出てきそう。

して、自担は?という話になりますが、自担はピサロゴッホです。ゴッホに関してはポスト印象派と言った方が適切なのかもしれませんがユニットととしては印象派担、世代でいうと19世紀末担といったところになりますね。この時点で既に言葉の選び方に迷いがありません。

きっかけとなった現場は前にも書いたのですがロンドンのナショナルギャラリーです。13世紀頃までさかのぼった時系列の展示を追う中で、時代の流れとともに移り変わる「なんのために描くのか」を問うのが面白くてたまらなかった。中世なら世界の真理であった宗教画、近世は宮廷の雇われ画家による肖像画、そして産業革命を経た近代社会においては、血でも命でもない、個人の自由意志による職業画家が思い思いの絵を描くようになりました。19世紀頃の画家たちは、ヨーロッパの「近代」をそのまま映し出すような存在ともいえます。あんたなんで田舎の小娘ばっか描いてんの?みたいなことを直接問いたくなるのが印象派の画家たちです。

そんな経緯を経て印象派担デビューした私が*1欧州在住という地理的条件をフルに活用して1年間巡りに巡ったギャラリーレポがあまりにこのサイトに溶け込んで遜色ないので、平然とヲタク日記の顔をして書き連ねていきます。

ヴァン・ゴッホ美術館(アムステルダム

5月の週末。春限定のチューリップ畑に行きたい!あと夏休みまでゴッホ待てない!ただし金と時間はない!という究極の無茶ぶりの妥結点は英→蘭夜行日帰り2daysという誤植を疑うトンデモ遠征でした。ロンドンから*2夜行バスでドーバーを渡り早朝にアムステルダム着、夜のバスで再びドーバー越境。ちなみにヨーロッパのヤコバはただの夜走ってるバスです。リクライニングは10度くらいならききますよ。

そんな無茶をしてまで行ったゴッホ美術館はもう全館ゴッホゴッホの絵というよりも、ゴッホの絵でみるゴッホの半生といった方が適切かも。膨大なコレクション一点一点にそれを描いた背景が記されています。テオに送った、文字とデッサンがびっしり書かれた手紙も。「この人、なんで絵を描いたんだろうなあ」という私が絵を愛するうえでの究極の問いへの答えは、ぜんぶ彼の絵の中にありました。

ゴッホを知ったときに一目惚れして、これを見るためにアムステルダムに来たともいえる「花咲くアーモンドの木の枝」はポストカード5枚くらい買っていきました。行った先々で気に入った絵に関しては、売店でポストカードを買うことにしています。なんか聞いたことあるような話ですね。


ちなみにヨーロッパの高速バスは価格崩壊もいいところで、爆安のLCCよりさらにメチャクチャに安いのですが、なんにせよ夜行はただの夜走ってるバスなのでよほどお金がないか旅慣れている人にしかオススメしません。あと明け透けに言うと、価格によって利用者層が明確に分かれるので運が悪いと民度の墓場のような環境で過ごすことになります。電車も飛行機も普通に安いので安心してください。

スコットランド国立美術館

エディンバラの新市街と旧市街の間にひっそりと佇むギャラリーながら、ゴーギャンタヒチの女を所蔵する穴場。印象派にふれて色彩が明るくなった頃のゴッホの絵もあります。私はスコットランドとスコッチが好きすぎて1年間で3回エディンバラに行ったのですがこの街は何度訪れても薄暗くて人間臭くて音が豊かで、民俗の棲む街であることを実感できて大好きです。あとハギスめっちゃうまい。

アントワープ大聖堂

ギャラリーでこそありませんが、ルーベンスを観に行きました。
これでピンときた諸姉はもうおわかりですね。フランダースの犬です。

もともとアントワープって観光地としては何もない街なのですが、日本人客が多いのか(というか日本人ばっかり来るんだろうな)展示とガイドは日本語訳つき、係員さんも日本語で挨拶してくれました。

入場料は学生4ユーロ。銀貨、いらないんだなあ…良い時代になったなあ…

チェコ国立美術館プラハ

プラハの宿で出会った日本人のおばさま(過去記事参照)に「スラブ叙事詩は絶対に見てきなさい」と言われて行ってきました。プラハの美術館は5つほどの分館に分かれていてそれぞれにナントカ宮殿と名前がついています。スラブ叙事詩が展示されているヴェレトゥルジュニー宮殿は観光地から少し離れた丘の上の住宅街にあるのですが、後になって「こういうのは県民文化センターっていうんだよ!!!!!」とブチ切れるほどの、宮殿とは名ばかりの県民文化センターでしかない建物を見つけるまでに随分と苦労しました。EXかヴェレトゥルジュニーかってくらいアクセスが悪い。

チェコは物価が安く、さらに学生は全館共通の入館チケットが無料ということでスラブ叙事詩の展示室の分だけ、1000円もしない入館料で済みました。
スラブ叙事詩はもうとんでもなかった。好き嫌いを飛び越えてとんでもないとしか言いようがなかった。こんなデカいもん20枚も日本のどこで展示するの?というくらいデカい。おばさまが、日本遠征では人手が多すぎてゆっくり見られないだろうから今のうちに、と強く強く勧めていらした理由もわかりました。

チェコで少しの間流行ったキュビズムは一見の価値がありました。ピカソもここに通ずるものがあるんだよね。

ちなみに旧市街の教会には、作者ミュシャが手掛けたステンドグラスがあります。こちらもステンドグラスってなんだっけ?と考え込みたくなるようなとんでもない作なのでお立ち寄りの際はぜひ。

ハンガリー国立美術館ブダペスト

ピカソのコレクションで有名な美術館。ぶっちゃけピカソはよくわからないのですが、ここで「よくわからない」という理由で見逃して数年後後悔してもブダペストなんてそうそう来られる場所じゃないし、行かない後悔より行く後悔というモットーの正しさを自らの人生をもって証明し続けてきたので行きました。ハンガリーも物価は安いのですが入館料はそこそこ。絵に対してええい投資だ!と言えるようになった自分の進歩を少しうれしく思いました。

結果、ピカソはやっぱりよくわからなかったけど、いつピカソ担になってもいい準備はできています。

ウフツィ美術館(フィレンツェ

中世の南欧は守備範囲ではないのですが、だんだん美術館巡りがルーティンになりつつあったので行きました。
この美術館、世界的に有名なのもそうなのですがとにかく並ぶ。時間指定の予約チケットがない一般入場者はまずチケット購入列に並びます。
これまでの並びに並んだ数々の経験上ざっと見た感じ30分もあればハケそうな人数だったので並んだのですが、この待機列、30分おきに10人ほど通しては止める、の繰り返しでなかなか進まず結局2時間ほど並ぶ羽目に。チケット売り場が入場口を兼ねているのが原因のようだけどだったらチケットだけ捌いてあとから時間指定で入場させてくれよ~~~~~~!!!!!!!!!ジャニショだって整理券配るのに!!!!!!!!!!!!*3

ダヴィンチめっちゃ絵上手いですね。そりゃみんな絵はべらぼうに上手いのですがルーベンスダヴィンチに関してはメッチャ上手いと形容せざるを得ないこの気持ちわかってくれる人いませんか。

オルセー美術館(パリ)

印象派の殿堂オルセーは、ルーヴルから印象派作品だけを集めてきたような美術館です。私みたいなヲタクのための美術館ですね。

ワンフロアまるごと印象派、探さなくてもいるピサロ先輩、モネ先生、好きなおかずだけ詰め込むと若干お腹いっぱいになることもわかりました。

ここにはゴッホの夜景の絵があります。ゴッホの青がやっぱり好きだなあ。

オランジュリー美術館(パリ)

ルーブルのすぐ隣にある小さなギャラリー。言わずと知れた睡蓮の美術館です。

円形の壁に囲むように展示された三枚の睡蓮。いろんな時間帯の睡蓮が並んだ部屋は、中心に座ってるだけで目が幸せです。光の天才モネ先生は、庭に佇む哀愁や草木の湿っぽさまで閉じ込めてしまったんだなあ。

ここは狭い分人口密度が高いので、だいたい睡蓮の前でセルフィーしてる女性客がいて全景はなかなか写真に納められません。いるよねパネルの前に群がるヲタク。フォトスポットは分散させるって韓国のカフェの人が言ってたな。

マルモッタン美術館(パリ)

パリの美術館は3軒目ですがパリに行ったのは一度きり、1泊2日だけです。狂気のヲタクは2日間で市内の美術館を4軒回っています。

個人蔵のコレクションを展示する邸宅のような美術館。街のはずれにあります。駅から美術館までの道のりに、日本人の営むパン屋さんがありました。

かの有名な日の出はここにあります。この小さな絵には、静かな邸宅がよく似合うなあ。中劇場にしっかりと根を下ろし、力強いスポットライトを浴びる実力派。こんな小さな絵が近代絵画に革命を起こしたのだと思うと胸が震えます。

マルモッタンまではバスがいちばん楽だったのですが、なんとツールドフランス千穐楽と被ってしまい交通規制の煽りをくらって地下鉄に乗ろうにも目の前よ地下鉄の駅に行けない!!!!みたいに四苦八苦しながら行った思い出。ルーブル前を一斉に駆け抜ける自転車たち、カッコよかったです。できればその道を渡りたかったです。

クレラー・ミュラー美術館(オッテルロー)

プラハでお会いしたゴッホ同担のおばさまに「絶対に行きなさい」と言われていた美術館。ご存知夜のカフェテラスがあります。

ただこの美術館、オランダの中でもほぼドイツ寄りの田舎町の、バスでしか行けない国立公園のど真ん中にあります。アクセス難易度は控えめに言っても鬼です。

金と時間に余裕のないヲタクはクレラーミュラー巡礼とドイツの友達とのクリスマスマーケット旅行を一緒に決行したため、オランダ〜ドイツの移動中にクレラーミュラーをぶち込むカッツカツのスケジュールを立てました。

前夜にイギリスを出て21時にアムステルダム入り、翌日早朝にアムステルダムを出てエーデへ、そこからバスで2回の乗り継ぎを経て朝一のクレラーミュラーへ、2時間滞在ののち、1時間おきに来るバスでドイツ行きの電車が止まるアーネムへ、ここまで約18時間。今回は夜行バスに乗っていないので体力だけは絶好調です。

そこまでしてでも行きたかったクレラーミュラー夜のカフェテラスがちらりと見えたとき、手汗が止まらなくなりました。美術館は撮影可の接触イベだと確信した瞬間です。

夜のカフェテラスはもちろんだけどアルルの跳ね橋の色彩がほんとーーーーーに綺麗で、もし叶うならもう一度観たいゴッホの絵ナンバーワンです。恐るべき現場マジック。

当時の企画展はゴッホの初期デッサン。初 期 デ ッ サ ン !!!!(鼻血卒倒)カツンのデビュー前の曲が音源化された10年前の興奮が蘇ってきました。
私は暗いと言われるポテトイーターの頃のゴッホもすごく好きで、印象派に触れるまでのゴッホの絵を描く理由がすべて詰まっていた、オランダの農村を描くダメダメな宣教師ゴッホのデッサンたち。その後フランスの印象派に出会い、産業化の波に呑まれ、オランダ農村という世界を描いてきた筆も心もポッキリ折られてしまったじたnゴッホ。鍬を持ったおばあさんだけ何枚も、同じジャガイモを囲む家族を何枚も、ゴッホにとって絵を描く理由が、この曲がった腰に、歪んだ眉に、ささくれた手指にあったのだと思うと涙が出ます。あとものすごい数のポストカード買って行った記憶があります。




しかしまあ、私がヨーロッパ遠征を楽しみまくってる間に上野にゴッホゴーギャンが遠征してたのには笑いましたけどね!!!!!!!!!!プリン欲しかったワイ!!!!!!!

ゴッホゴーギャンの関係は「炎の人」とかいう神同人小説に全て詰まっているので、kindleでご一読の上僕のリヴァ・るを観てください。因縁コンビ厨からのお願いです。

ヨーロッパ美術館行脚が趣味になったおかげで旅がすごく楽しくなって、旅に出る理由ができて、私の在外生活の3分の1くらいは画家たちに支えられてきたんじゃないかなーと思うほどです。2日間で美術館を4軒回ったりバスが10分遅れたら国際列車の乗り継ぎに間に合わなくなる旅程を立てたりと西洋ギャラリーのスジ屋のような遠征ヲタクになって帰ってきたので、ヨーロッパの美術館にご興味のある方、どこをどう巡ったらいいの?なんて方はぜひとも私まで。

*1:印象派というとややミーハーみを帯びてちょっと小馬鹿にされるあたりもヲタヲタしいですね

*2:ロンドンまでもバスで5時間

*3:バルセロナなんかは当日券も時間指定制